17冊目は、
自分を立てなおす対話
加藤 雅則 著
日本経済新聞出版社
です。
組織など人が関わる問題には理不尽な問題があります。理不尽な問題、対処できない問題に出会うと、怒り、哀しみ、あきらめ感などが湧き上がってきます。そんな問題にとらわれてしまうと、堂々巡りになったり自分を責めたり、精神が疲れたりで、組織に居続けることができなくなることがあります。私にも、組織の中で経験した理不尽な問題はいくつもあります。そんな問題をうまく解決できず、不活性になってしまった経験もあります。そういった問題は人間活性化の妨げとなります。
本書の目的は、そんな人たちが、組織の中でやり直して働き続けることができるようになることです。
著者は、組織には解決策が実行できない問題があるといいます。私は、社会人としてまだ6年間ほどの経験しかありませんが、解決できなかった問題はいくつもありました。また、本書にもそういった事例紹介があり、そういう問題があることは納得できます。
そして著者は、問題には解決するだけでなく、問題を解消する、というアプローチもあるというのです。
【問題=事実×捉え方】
と考えれば、捉え方が変われば、結果として問題が変わります。そして、捉え方を変えるには、対話が有効だと著者はいいます。対話を通して、事実の捉え方がかわり、結果として今まで理不尽な問題だったものが、対処可能な問題へと変わります。本書の知恵を活かして、組織の中でやり直し、問題を改善できるチャンスを待つ、一歩ずつ前進する、それこそが、著者が理想としていることではないかな、と思います。
また、著者は、仕事の問題は社内の同じ問題を抱えているような人たちと対話するのがいい、といいます。もし、社内に話す相手がいなければ、社外でも可です。わが身を振り返ってみると、自分自身も対話が必要だと感じます。対話できる場を見つけたいと思います。
本書の中で著者は、「なんとか会社の中で、それほどのトレーニングをしなくても、当事者同士で、コーチング的な対話ができないか?」と考えた、と述べています。著者の考えは、よい社会のために必要な考えだと思います。今の時代、コーチング的な対話は、精神衛生上不可欠なものだと思います。すでに社会的に安定している人がさらに上にいくためのコーチングではなく、生活を安定させるためのコーチングですから、お金がかかるとしてもお米を買うような値段で手に入るべきではないでしょうか。身近に、自分を立てなおすための対話ができる機会があればと思います。
「自分を立てなおす」、ということは、その場から動かないとも言えると思います。その場所に思い入れもなければ、自分を立てなおすという必要もないのかもしれません。問題に捉われてしまって不活性になっているけれど、それでもここを動きたくない、と思えるような場所を持つことがスタートかもしれません。私の場合、人間活性化に関る仕事が理想であり、その場で何度も「自分を立てなおす」ことで、自分の器を大きくする事ができるのだと思います。
本書のあちこちには、著者の人間観が表されており、参考になることも多いです。また、対話のテクニックや、傾聴ボランティア、個人的に実施しているインタビューにも活用できそうなノウハウが数多くありました。レビューでは触れていませんが、対話のステップもわかりやすく書かれており、実践に役立つ一冊となっていると思います。
最後に、印象に残った言葉を引用します。
「(組織の不合理や不条理に対して、やり切れなさや諦め感が生まれるのは)、『人の善意を信じたい』という、人間の根本的な欲求ではないか。」
「対話は、感情エネルギーの交流」
「東洋的な治療アプローチは、原因を取り除くという発想ではなく、痛みの原因にも原因となった理由があり、それを肯定していくことで、自然治癒力が引きだされていく。」
「医療・福祉の分野では、『患者の会』が治療にとても有効とされている。」