「初版の序」には1954年8月の日付がある。
それでも、最近書かれたのではないかと思うようなことが多々ある。
岡本太郎は本質を見つめていたと思う。
そして、社会は本質をはずれたところにあるものなのだろう。
だから、岡本太郎の社会への批判は時を越えても通じる。
岡本太郎は、日々の生活に充実感や生きがい、自信を求めていた。
日々の生活が空しいのは、芸術がないからだという。
芸術とは、芸術家だけのものではない。
すべての人が自分らしく、自分だけの道を進むことが芸術なのだということだと思う。
自分の中の創造欲を芸術として発露させればよいのだという。
そしてそれは、その作品を見る者の生きがい感を触発するのだという。
P.19
スター選手のファインプレーを見て楽しいが、自分は何も参加していない。
楽しみながら、言いようのない空しさに傷つけられている。
自己放棄をやめなければならない。
というくだりに、はげしく同意する。
岡本太郎が1953年にパリとニューヨークでの個展を開くための出発の際に、
記者から「こんどあちらへ行かれて、何を得てこられるんでしょうか?」
と尋ねられて、
「いや、こちらが与えにゆくんです」
と真面目に返事をしたら、大笑いされて腹立たしかった、
というエピソードが、日本社会を顕著に現しており、
おもしろかった。
自分を失いがちなので、定期的にこの本を開いて、
目を覚ます必要がある。