2012年5月4日金曜日

働くひとのためのキャリア・デザイン(23/100)



23冊目は、
働くひとのためのキャリア・デザイン
金井壽宏 著
PHP新書
です。 

キャリアについて考えるきっかけをくれる一冊です。

本書の主張は、「キャリアの節目では自身の進路を自己で選択し、節目以外では流されて(ドリフトして)みよう」というものです。

著者によると、日本では進路を流されて決める人が多いとのことです。仕事は人生の大半の時間を占め、間接的にもプライベートに影響を与えます。自身のキャリアの将来の方向性や目標を持たず、キャリアに自己決定感を感じないということであれば、その人は少なくとも仕事においては、活性化しづらいのではないでしょうか。 

本書では特に、「キャリアの節目」について書かれており、〈最初の就職〉と〈人生の正午の中年〉にスポットをあてています。私は最近、「理想と現実」や「足し算と引き算」のバランスについて考えていたのですが、本書の「節目」という考え方は良い示唆を与えてくれました。本書では「節目では過去を振り返り、将来を見直してキャリアをデザインする」とあります。「将来を見る」とは「理想をみること」、「理想から現在を引き算すること」と考えることもできそうです。また、本書では「節目の間は現実に流されることをいとわず、偶然の出会いを楽しむ」とあります。これは「現実を生き、足し算の人間観で生きること」と捉えることができそうです。

節目のときには、将来の理想・大きな夢を見直し次の節目の間の夢・進むべき道を選択する。節目の間は「今・ここ」にあるものに感謝し、日々を楽しみながら成長する、というのがいいのかなと感じています。

著者は、毎朝、自身の将来について考えるのは不健康とも述べています。私はどちらかというと、自身の将来について、日々考えてしまう方です。自己啓発本や手帳術にも「日々目標を確認すべし」とあることが多いように思います。ですが、振り返ってみますと、日々考えたからといって、毎回、考えかたが新しくなるわけではないし、むしろ思考の焦点がボヤけてくる気さえします。それはまるで、文字をじっと見つめていると、「こんな字だったかな」と、わからなくなってくることに感覚は似ています。また、毎日、理想と現実を比較ばかりしていてはダメだということと、近い部分があると思います。本書は、「節目くらいはキャリアを考えよう」と主張していますが、私にとっては、「節目以外は日々考えなくてもいいんだ」と開放してくれた本でありました。

本書を読んで気づいたことは、「物事には振り返るべきタイミングがある」ということです。 振り返るべきタイミングは、人生の節目、10年、5年、1年、半年、1ヶ月、1週間、1日とさまざまです。「物事ごとに適切なタイミングで、振り返り、将来の方向を見直していくこと」 、それは、ビジネスやマネジメントの世界では一般的なことかもしれませんが、自身のこととなると、そんなことさえ見落としてしまっていました。 私の考える活性化のモデルにも、「環境を認識するタイミング」を考慮すべきだと思います。「振り返る頻度が多すぎては適切な効果が得られない」、ということは下品な例ですが、「トイレのタンクに水が少ししか貯まってないのに頻繁に水を流しても効果がない」ようなものだと思います。ものごとはある程度、期が熟す必要があるのでしょう。

私は今、節目の手前にいると感じています。次の節目までの間に、資格をとり、人と関わる経験を積もうと考えています。節目間の積み重ねにより、節目で選べる次のキャリアが変わってくるのでしょう。そして、今は節目ではないのだから、日々を楽しみたいとも思います。それが私自身の活性化につながるでしょう。

本書は学術的で、「キャリアとは何か」について研究成果を基に述べられています。しかし、「どうやってデザインするか」についてはちょっと内容が少ないです。 ただ、「いいキャリア」の例として、いくつか紹介されているため、そこから自分に応用するのがよいでしょう。また、友人や家族、メンターと思える人に話し相手になってもらうのもいいでしょう。中年以降は成人前期と異なり、育成という道が合うのでは、と紹介もしてくれています。(エリクソンの人間発達のライフサイクル論、漸成説) 「トランジションサイクルモデル」という節目と節目間のステージの移り変わりのモデルが紹介されており、これはキャリアだけじゃなく、資格勉強やスポーツ等に応用できると感じました。各ステージごとに特徴があり、それに応じた対応があるとのことです。対応できなければ悪循環になりますし、うまく対応して善循環への移行も可能です。

著者も本書の中で述べていますが、読書だけではキャリアについて限界があります。自身のこととして考え、行動することが重要です。 一人よりも話しながらの方がうまく考えられるという人も多いと思います。 本書を基にした、キャリアデザインのワークショップや読書会があれば、キャリアについてよりいいデザインができるだろうと思います。まだまだそんな機会は身近にないのが現実かなぁと思います。

以下、印象深かった文章を引用します。
P106、節目だけはデザインすることによって、節目をくぐる度にさらにビッグに一皮むけるような生き方を、めざしたいものだ。 (※引用者追記、節目も多すぎては、一皮むけてもビッグにならない。)
P115、過剰な計画や過剰な設計をめざして疲れてしまう。考えすぎて元気よく歩めなくなるようなら、本末転倒だ。 
P116、キャリアを選び取るときに、ひとがやっていることは、ある意味では、夢と現実との間のダイナミックな刷り合わせである。 
P150、キャリアを歩むうえでの発想や行動のレパートリーを豊かにするうえで、しばしばドリフトしたほうがいいことさえある。 
P157、箱庭療法で、登校拒否児が治って学校に行くようになったとして、学校のほうに問題があったらどうするのか、会社に不適応で相談にきたひとも同じで、会社のほうに、人事のほうに問題があったらどうするのか、そこを考えるひともいるぞ。
P179、求む男子。至難の旅。僅かな報酬。極寒。暗黒の日々。絶えざる危険。生還の保障ない。成功の暁には名誉と賞賛を得る。 
P213、霧がかかっていてもやもやしているのはいやだ。しかし、霧が晴れると希望も霧散してしまうというディレンマがここにある。
P240、カウフマンの研究した高齢のひとたちは、歳をとること自体に意味を見出しているのではなく、高齢になっても自分自身であること、自分らしく生き抜くことに意味を見出しているのであった。 
P279、もし、あなたと街角で出会っても、これだけの人物なら雇いたいと思うぐらい、自分を絶えず磨いているかどうかが問われる。

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