2012年11月3日土曜日

なぜ会社は変われないのか (26/100)




26冊目は、
なぜ会社は変われないのか
危機突破の企業風土改革
柴田昌治 著
日本経済新聞社
1998年


企業風土の変革をテーマに、会社が生まれ変わる姿が物語調に描かれています。
著者は経営コンサルタントです。
うまくいっていない会社が舞台なのですが、読みながら「こういうことあるよなぁ」と思ってしまう、“あるある本”です。


本書では、経営陣も管理職も一般社員もみんな持ち場でがんばっているのにうまくいかない会社が、生まれ変わっていきます。
会社が変わると言っても、ソフトとハードの二通りあります。
ハードは、制度や組織構造を指します。
ソフトは、風土、組織文化を指します。本書ではそのソフトの方をどうやって変えるか、が書かれています。
私は、この分類を知っただけでも、視界が開けた気がしました。
今まで、会社という目に見えないものに対して、ソフトもハードも混じった状態で考えていたのです。

組織のソフトの部分は生ものであり、だんだんと悪くなっていきます。
これはソフトそのものの問題と、ハードからの影響(成果主義の失敗等)とがあるでしょう。
何もしなければ、組織の風土や文化はやがて、個別最適になり、部門間の協力が減り、ことなかれ主義になっていきます。
人がいきいきと仕事をするということに対しては、ハードよりもソフトの方が影響が強いと思います。

組織が危機に陥った時、ハードの改善だけしてもソフトが悪いままでは、ハードの改善の効果も出ません。
また、ソフトが悪いのに、ハードを変えても効果はありません。
加えて、ソフトの改善には人が関わることが重要で、コミュニケーション技術が必要です。

レビューを書こうとして知ったのですが、本書は14年も前の書籍なのですね。
今も伝わってくるものがあるということは、ビジネスの場には当時から変わらないものがあるということでしょう。
この本からは、「会社をよくしよう」という熱い思いが伝わってきて、数年に1度は読んでいます。
「今いる組織を良くしたい」、「いきいきと働きたい」、という思いを思い起こさせてくれ、コンサルティングを志した時の気持ちを思い出すことができます。
私がやりたいコンサルティングは、ソフトの方だということが、本書を読んで明確になりました。
本書では、組織改革コンサルティングのノウハウがたくさん記載されており、著者の他の書籍も読んで勉強しようと思います。

人間の活性化という観点からも、会社や職場はとても重要です。
「エネルギーが出てくる」職場と、「いつ辞めようかと思ってしまう」職場では、人の活性化は全く異なります。

本書では、組織の活性化についても書かれています。
著者は「不安定な状態」が活性化した状態だといいます。
これは、「不安定な状態」だからこそ改善のエネルギーが生まれるから、だそうです。
安定している状態というのは前向きなエネルギーが低下している状態、とも述べています。

ということは、人間の活性化においても、「不安定な状態」が活性化している状態なのでしょうか。
確かに、困っているときには、なんとかしようというエネルギーが出てきます。
ただ、不安定なだけでは精神的な満足度・充実感は低いような気もします。
組織と人間では、活性化の意味合いが少し異なるのかもしれません。


もう一点、興味深かったのは、98ページの会社をよくするためのミーティングの場面で、メンバーが不満を吐き出しつくすと、気持ちに決着がついて、気持ちが前向きになってくるシーンです。
本書の中では「自然治癒力」という表現が使われていますが、気持ちがすっきりすると、おのずと前向きになるようです。
人間活性化を考える時も、プラスの反応を求めるよりも、マイナスの反応をのぞけば自然と活性化してくるものかもしれません。
というよりも、マイナスの反応がある内は、プラスの反応の効果もなくなるのかもしれません。
まずは、気持ちをすっきりさせること。それが、人間活性化の第一歩かもしれません。
また、人間活性化モデルを再考したいと思います。

最後に印象に残ったことばを紹介します。

P2.制度やシステム、戦略などハードに属するものは「変えよう」と思えば、トップダウンでも変えられるものです。しかし、会社に対する「思い」だとかチームワークを良くしようという「気持ち」などのソフトに属する部分は、「変えよう」と思うだけでは簡単には変わりません。

P3.唯一、ひとの気持ちが変わっていくのは、「変えよう」とするだけでなく、責任あるポジションにいる人が先頭に立って「一緒に変わろう」とするときなのです。

P31.あきらめるというのは、ある面で楽な部分があって「私は何もしないよ」と宣言しているようなものです。

P32.そうならないことを願っているが、もし君が指弾されるような事態になれば、私はそれを問題にする心の用意をしているということを伝えておきたい。

P42.結局は、人のやる気を引き出すことが改革のかなめだと経験から知らされていた。

P53.往々にしてトップダウン型の活動では、推進側のシナリオにそって決められたとおりにやることを一方的に社員に押しつけます。なまじ推進者はトップのお墨付きがあるから、やらせるのが自分達の仕事と思って、相手の気持ちにお構いなくガンガンやるわけです。

P54.会社が社員を変えるのではなく、社員が会社を変えるということ

P59.社員は誰も怠けようなんて考えていないし、朝から晩まで必死に働いています。みんな一生懸命がんばっているんです。にもかかわらず、経営状態は好転するどころか、むしろだんだん悪くなっているようにも見えます。

P66.「協調する」というのは、一面で変化を嫌う不活性的な状態に通じる。それが「負のエネルギー」つまり「安定化」というエネルギーをもっているのに対し、「協力する」というのは「正のエネルギー」つまり「不安定化」という要素を内含している。

P120.前向きの価値感を共有している仲間がいれば殻も破れるのかもしれないけど、一人だけ出る杭になると、やはり負のベクトルが働いている組織の中では爆死してしまうんです。

P133.最初に自分を開示してしまうと、うまく話そう、りっぱな意見を言おうといった“勝ち負け意識”も薄められる。

P138.あのにぎり飯が唯一の思い出です。親父というと、初めて会う息子に食べさせようと大事に腹の中に抱えてきてくれた、あのにぎり飯のぬくもりを今でも思い出すんです。

P213.失敗しやすい環境というのも大切なんですよ。つまり、失敗してもフォローが効いていて、あまり大きな損失にならないような環境ですね。

P240.衆知を集めて一人で決める

P284.対立あるところに雑談なし。

P327.部屋のドアには『入室後は肩書きなし』という札が掛けられている。この部屋の中だけでも、目線を同じにして徹底的に知恵を出し合おうというみんなの気持ちの表れである。

P333.攻めたり、押しつけたりすると気持ちが逃げる、気持ちが逃げると知恵も一緒に逃げていくんだと。ないと思っていた知恵は、じつは逃げていただけでちゃんとあった。

P335.それなのに川久保さんや仙石さんは、とにかく生産を支えろと踏んばっている。他が骨と皮になっても生産だけは食わせなきゃだめだって頑張る。それを見て、メーカーというのは何を削ぎ落としていっても最後まで守るべき砦は直接部門なんだと痛感しました。

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