31冊目は
しぐさのコミュニケーション
人は親しみをどう伝えあうか
大坊郁夫 著
1998年 サイエンス社
です。
本書は、社会心理学・対人心理学の論文、研究がまとめられています。
知識量が多く、教科書的な一冊です。
実は、この本を選んだ理由は、大学時代の社会心理学の先生の著作だったということもあります。
数多くの実験の結果がコンパクトに掲載されているので、必要な時には原典にあたるとよいと思います。
心理学と聞くとなんだか催眠術を連想してしてしまい、相手を思い通り動かす(操作する)ための学問のようにも思えますが、
少なくとも私が心理学を学んだのは、相手や人間を理解するためでした。
コミュニケーションは、人と人との間に存在します。
目の前に人が実在するからといって、その人のことが全てわかるわけではありません。
相手のこと、とくに心の中については、コミュニケーションを通してしか知りようがないと思います。
本書で触れられているコミュニケーションの種類には、
・顔の表情、化粧、顔の魅力
・姿勢
・うなづき
・接触
・視線
・着席の仕方
・メディア
など、多様なものがあります。
コミュニケーションについて知ることは、相手をより理解する手がかりとなります。
また、コミュニケーションがよりうまくなれば、自分の意思を相手に伝えやすくなります。
人間活性化の観点から考えると、コミュニケーションが上達することで、活性化反応は促進され、不要な不活性化反応は会費できると思います。
コミュニケーションの難しいところは、同じ動作であっても時と場合が異なれば効果も異なるというところです。
例えば、女性は相手の男性の視線が多いのを好意的に認知するのに対して、男性は視線量の多い女性をあまり好意的には見なしていない。(クラインクら・1973)
他には、電話でのコミュニケーションは緊張しやすかったり、相互作用が断片的になりやすかったりしますが、プライベートな緊張しやすい内容の話題については、対面よりも非対面場面の方が発言が流暢で活発になることも報告されています。(飯塚ら・1985)
人の活動は、同じものは二つとありません。
この点については、書籍等で知識を深めるとともに、コミュニケーションスキルを使用して経験を積む必要があると思います。
また、人は時代とともにどんどん変わっていくため、知識や経験もいつまでも役立つとは限りません。
コミュニケーション、ひいては人間活性化は、永遠の課題となりそうです。
最後に、本書で紹介されていた実験の中で興味深かったものをご紹介します。
P68.(大坊・1992)成績と教室の着席位置の関係は、教室の前部席の学生の成績がよく、廊下側ややや後方部の学生の成績はよくない。
P93.(ハイルマンとサルワタリ・1979)男性の求職志願者は魅力的な外見であると、仕事の能力があると評価される。
一方、女性の志願者については、事務職については同様だが、管理職の場合には、魅力的であることは仕事の能力については否定的に見なされていた。
P94.(ランディとシガール・1974)女子大学生が書いたとされたレポートを男子学生が採点するという研究。
出来の悪いレポートの場合には美しくない人物のレポートは厳しく採点され、写真を提示しない条件では美人と点数が近かった。
(ちなみに、大坊・1993では、日本の実験では顔の魅力は採点に影響が見られなかった。)
P116.(サバテリィら・1982)記号化のうまい妻の夫は結婚生活についての不平不満が少なく安定している。
P127.(大坊と瀧本・1992)男女とも欺瞞行為をするよう指示を受けると、それぞれがふだん活発に用いていないチャネルの行動が多くなる。
P162.(レヴィンジャーとスノーク・1972)夫婦間では恋人同士よりも発言量が少ないこと、仲のよい夫婦は危機に瀕している夫婦に比べて視線量が少ない。
P168.(スタング・1973)三人の討論場面:もっとも発言していた者はリーダーとして認知されますが、もっとも好意的に見なされたのは二番目に発言した者だった。
P168.(ガイエンら・1975・1976)身体への接触について、未婚のカップルの場合には、男性は恋人からの接触を愛情の表現と解釈する傾向が強いが、夫婦の場合ではこれが逆転し、夫は妻からの身体接触をあまり快適とは感じていない。
P169.(ショーとサドラー・1965等)好意が直接性を高め、直接性の上昇によって好意も増すのは、結合段階へ向かうまで。
P176.(パターソン・1978)悩んでいる人、何かに不安がっている人を抱きかかえると、覚醒が減じて情動状態は鎮静化する。
P187.(大坊・1985)失恋後の行動として、男性は別れた相手と類似した女性を得ようとするが、女性は反対に似た特徴を持つ男性を避ける傾向がある。
男性は思い出の場所へつい出かけてしまうが、女性は思い出の場所へは足を向けないようにする。
ただ、記念の品はとっておくという結果が出ている。
P188.(ノラー・1984)夫婦関係があやうくなるのは、夫のコミュニケーションのまずさによる可能性が高いと推測できる。
・・・なんだか、夫婦関係の実験結果に強く反応してしまいました。
追記
返信削除対人関係の親密さが増すとともに、コミュニケーションの直接性も増しますが、さらに関係が発展すると、コミュニケーションの機能が変化し、コミュニケーションの直接性は低下し、メタ・コミュニケーションが発揮されます(P170.大坊1990)。これは、フィードラーのコンティジェンシー理論で、「リーダーと集団の人間関係が良好な時」には、従業員中心型よりも仕事中心型のリーダーシップの方が高い業績をもたらすのと、似ていると感じました。